硝子体注射
硝子体注射は、目薬では効果の届きにくい網膜の病気に対して、眼の中に薬剤を注射する治療法です。適応となる疾患としては、加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫、糖尿病黄斑浮腫などがあります。いずれの病気も発症には血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)が関係していると考えられており、VEGFを阻害することにより病気を抑える治療法です。標準的には4週ごとに2~3回注射を行い、その後は定期的に診察をして、病気の活動性がみられれば、再度注射を行います。
当院では、清潔な手術室と痛みのない麻酔で硝子体注射を行っています。
治療の適応となる疾患
1,進出型加齢黄斑変性
網膜の中心部の黄斑部という最も視力が出る部位の網膜下に、脈絡膜新生血管という異常な血管網が生じ、網膜の内部や網膜の下で水漏れや出血を起こして網膜の機能を低下させ、物が歪んで見える、視力が低下するなどの症状をきたす病気です。網膜光凝固、光線力学療法などの治療法が行われてきましたが、抗VEGF薬硝子体注射療法の有効性が明らかになり、近年では標準治療となっています。まず初回導入治療として1ヶ月ごとに3回注射を行い、その後病状に応じて追加で注射の治療を行っていきます。病気は完全に鎮静化するまで長期間かかることが多く、そのため注射の治療も長期に渡って継続して行っていく必要があり、辛抱強く病気と付き合っていくことが重要です。
2,糖尿病黄斑浮腫
糖尿病網膜症は糖尿病により網膜の血管が傷んでしまう病態ですが、瘤状に変形した毛細血管(毛細血管瘤)や血管の壁が傷んでしまった毛細血管から血液の成分が漏れ出し、網膜の中心部である黄斑部に浮腫(むくみ)が生じて、物が歪んで見える、視力が低下するなどの症状をきたす病気です。抗VEGF薬硝子体注射療法、網膜光凝固、ステロイド硝子体注射療法、硝子体手術などの治療法がありますが、様々な臨床試験で抗VEGF療法の有効性が示され、現在の標準的治療になっています。初回導入治療として1か月ごとに3回注射を行い、その後病状に応じて追加の注射治療を行う事が望ましいと言われています。注射の治療で効果が乏しいときや、再発を繰り返すときは、レーザー治療や手術治療を行うことがあります。
3,網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症に伴う黄斑浮腫
糖尿病網膜症は糖尿病により網膜の血管が傷んでしまう病態ですが、瘤状に変形した毛細血管(毛細血管瘤)や血管の壁網膜から心臓に血液を戻す血管である網膜静脈が詰まってしまう病気です。詰まった静脈が視神経の内部の中心静脈であれば網膜中心静脈閉塞症に、網膜静脈の枝であれば網膜静脈分枝閉塞症になります(一般的に網膜中心静脈閉塞症の方が重症になります)。静脈が詰まることで鬱血し、黄斑部に浮腫(むくみ)を生じることがあります。黄斑浮腫が生じると、物が歪んで見える、視力が低下するなどの症状をきたします。この病気でも抗VEGF薬硝子体注射療法の有効性が広く明らかになり、現在の標準的治療となっています。初回治療として1回注射を行い(浮腫の程度によって2-3回行う事もあります)、その後病状に応じて追加の注射治療を行っていきます。
レーザー治療
当院ではアルゴンレーザーとYAGレーザーを導入し、糖尿病網膜症や網膜裂孔などの網膜疾患、後発白内障、緑内障などの種々の病気に対してレーザー治療を行っています。
当院で行えるレーザー治療
1,汎網膜光凝固
進行した糖尿病網膜症や、血管閉塞の強い網膜中心静脈閉塞症では、広範囲の網膜の血管が閉塞して酸欠状態になっています。網膜は酸素消費量の多く酸欠に弱い組織のため、血管が閉塞して酸欠になると、血管新生を促す血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)が多量に眼内に分泌されるようになります。このVEGFに反応して、網膜や虹彩に新生血管という未熟な血管が生じてきますが、新生血管は構造的にも未熟であるため、破綻して眼の中で出血を起こしたり(硝子体出血)、新生血管から漏れ出したタンパク質などが膜状に網膜表面に張ってきて(増殖膜)、増殖膜の収縮により網膜剥離を起こしたりします。また虹彩に新生血管が発生すると、難治性の血管新生緑内障を生じます。これらの合併症を起こさないようにするため、広範囲の網膜をレーザー光線で焼灼することで酸素消費量を低下させ、VEGFが眼の中に分泌されないようにして新生血管の発生を抑える治療が汎網膜光凝固です。
2,局所網膜光凝固
網膜裂孔や糖尿病黄斑浮腫などに対して局所的な網膜光凝固を行う治療です。
3,レーザー後嚢切開術
白内障手術から時間がたつと、白内障手術の時に再利用した水晶体嚢の後面である後嚢が濁ってきて、霞んで見えづらくなることがあります(後発白内障)。この後発白内障に対して、YAGレーザーで濁った後嚢に切開を入れることで再び見えやすくする治療です。
4,レーザー虹彩切開術
虹彩にレーザーで小さな孔をあけて房水が前房へ流れるバイパス通路を作り、閉塞隅角緑内障による急性発作が起きないように予防する治療です。
一般眼科診療
ドライアイ
ドライアイは眼の乾きやゴロゴロ感などの不快感の原因となる、つらい病気です。あまり病気として認識されることが多くないため、ドライアイに悩む方もあまり眼科を受診することは多くありませんが、適切に管理を行う事で、症状が軽減して日常生活の質が上がることが期待できます。
当院ではドライアイの病状に応じて点眼薬の使い分けを心がけており、必要に応じて薬剤の併用や、涙点プラグや涙点閉鎖術などの外科的治療を行っています。ドライアイでお悩みの方はお気軽にご相談ください。
1,ドライアイとは
ドライアイとは、眼の表面を潤して保護する役割を担っている涙液(なみだ)の量が減ったり、質的に蒸発しやすくなったりすることによって起こる、慢性的な眼の不快感を伴う病気です。エアコンの使用頻度の増加、スマートフォン・タブレットの普及、コンタクトレンズの使用などにより、ドライアイの有病率は近年増加傾向にあり、現在は全人口の15~20%がドライアイと推定されています。
2,ドライアイのメカニズム
ドライアイは長い間涙の量が減ることによって生じるものと考えられてきました。確かに涙の分泌量が減少することによって生じるドライアイもありますが、現在ではドライアイの大半は、「涙の量は保たれているのに眼の表面に留まる力が弱い」 ことによっていることが分かり、「涙液の安定性低下」 がドライアイの根幹であると考えられています。涙が眼の表面に留まりにくくなっている原因として、最も考えられているのが角膜や結膜にある「膜型ムチン」という成分です。細胞の表面はもともと疎水性(水を弾く性質)ですが、この膜型ムチンがあることで涙が伸びやすくなっています。この膜型ムチンが減っていることが、ドライアイの主な原因ではないかと考えられています。
3,ドライアイの検査・診察
問診
ドライアイの原因を探るために、眼の症状や生活習慣、既往歴などを伺います。
検査
ドライアイでは、以下のような検査を行います。
視力検査
眼科では最初に行われる検査です。
ドライアイ以外に視力が低下する病気がないかどうかの鑑別に必要です。
細隙灯顕微鏡検査
診察室で顕微鏡を用いて眼の表面の状態を見る検査です。フルオレセインという色素で眼の表面を染色することで、表面の傷の状態や涙の蒸発しやすさをチェックすることができます。
シルマー試験
涙の分泌量を見る検査です。以前はよく行われていましたが、涙の分泌量はドライアイの診断に必須でなくなってからは行われることは少なくなりました。
小児眼科
0歳では0.1ぐらいの視力しかなく、9歳くらいまでに成人と同様の視力になると言われています。
この時期までに強い遠視や乱視、斜視など目の成長の妨げになってしまう病気があると、弱視と言われる状態になってしまいます。
小児眼科ではそういった病気があるか検査で確認し、状態に合わせて眼鏡やアイパッチなどで目を正しく使えるように訓練をしていきます。早期発見、早期治療を開始するほど視力が改善していきますので、ご不安があればご相談ください。当院では国家資格を有する視能訓練士が在籍しています。
【弱視】
0歳では0.1ぐらいの視力しかなく、9歳くらいまでに成人と同様の視力になると言われています。
【斜視】
一方の目は正面を見ているが、もう一方の目は別の方向を向いてしまっている状態。
内斜視:いわゆる寄り目のような状態。生まれつき目が寄っている先天内斜視や、強度の遠視のせいで寄り目になってしまう調節性内斜視があります。
外斜視:一方の目が外側にずれている状態。常にずれているタイプや1日の中で変動するタイプがある。
【屈折異常】
近視:近くが見やすいが遠くが見えづらい状態。
遠視:遠くは見えるが近くが見づらい状態。
乱視:焦点が1つに合いづらく、二重に見えたりしてしまう状態。
下記の症状がある場合は一度ご相談下さい。
① 眩しがったり、片目をつぶったりする。
② よく目を細めて見ている。
③ 顔を傾けたり、上目遣いで見たりしている。
④ 視線が合わなかったり、目が揺れている。
⑤ 瞬きが異様に多い。
コンタクトレンズ処方
コンタクトレンズの処方箋発行も承っております。
(販売は行っておりません)
※コンタクトレンズ処方希望の患者様は診療時間の30分前(午前12:00/午後16:30)までにご来院ください。度数決定、装用練習などが必要となり時間がかかる場合がございます。(予約不要)
※月曜・火曜・土曜の終日にコンタクトレンズ処方を行います。(水曜・木曜・金曜は一般診療及び予約のみとなります)
※第一及び第三水曜の午後は手術になる場合があり、外来につきましては休診または遅れての開始となる場合がございますので、事前にHPまたはお電話にてご確認ください。
※初診時のご予約は受け付けておりません。診療時間内にご来院ください。